ステルヴィオ峠(スティルフサー・ヨッホ)

ステルヴィオ峠、アルプスで一番人気がある自動車峠

 ステルヴィオ峠はイタリア語名で、ドイツ語名はスティルフサー峠という。 峠の標高は2748m、これはアルプスにあって自動車で越えられる峠として、フランス・アルプスにあるイズラン峠の2770mに 継ぐ標高である。第3位アニエール峠(2740m)、第4位ロストフォン峠(2715m)、第5位ガリビエール峠(2645m)は全部 フランス・アルプスにあるので、 ステルヴィオ峠はこの位置にあってこれらフランスの峠に割り込む標高で聳えている。
 ステルヴィオ峠はイタリアのヴェノスタ谷から同じくイタリアのブロミオを経てレーティッシュ鉄道ベルニナ線の終点であるティラーノに抜ける峠で、 峠全体がイタリアにあると言えるが、峠を越えた西側で分岐してスイスの国境を越えるルートもあるので、イタリアとスイスの国境の峠という一面も持っている。
 ヴェノスタ谷は第一次大戦後にオーストリアからイタリアに領有が移った地域で、今でもイタリア語に併用してドイツ語が使われ、道路標識なども 二ヶ国語表示になっている。峠はこのヴェノスタ谷の西の端に屏風のように聳える3000〜3500m級の山脈の北東斜面を攀じ上る。

 何年か前、アルプス峠道の巨匠kitamuraさんが御自身のHPで企画したアルプス峠道人気投票ではこのステルヴィオ峠が一位に選ばれた。 その後、アウディがテレビCMに登場させた時は、公開掲示板にトピックスを立てて大いに盛り上がった。このCMは主にイタリアのブルミオ側から 雪崩除け桟道が並ぶ道路を登って行き、峠の頂上からヴェノスタ谷方面を眺め下すという趣向で、ヴェノスタ谷への恐ろしいつづら折れが 画面に現れた。 ところが、アウディ日本の広報はステルヴィオ峠の凄さを全く認識していなくて、各種問い合わせに峠の名称すら頓珍漢な答えしか出来ず、仲間をがっかりさせた。


 ステルヴィオ峠の魅力は何と言ってもこのつづら折れである。イズラン峠もアニエール峠も猛烈なつづら折れがあるが、ステルヴィオ峠のつづら折れには凄味がある。 さらに圧倒的な風景も後押ししてくれる。
 ヴェノスタ谷を通る幹線S38が道路番号そのままに峠への分岐後もステルヴィオ峠に続く。分岐のあるスポンディグナの標高は885mここから30Kmで標高差 1868mを登る。
 道路はトラファイと云う小さな集落付近から急激に傾斜を増し、最後の約5Kmは平均斜度12度を越える、ということはきついところは15度近い勾配となる。 車のギヤ・シフト・レバーは1速と2速を頻繁に往復し、ハンドルをロック・ツー・ロックで回す重労働が続く。  


 ヴェノスタ谷の入り口付近。
 向うの山は方角として東側で、ドロミテに繋がる岩山である。岩山の手前の谷はブレンナー峠から下って来る 古代ローマからの北国とイタリアを結ぶ大幹線で、現在では一般道路、鉄道、高速道路が走っている。この谷は、イタリアの太陽に憧れたゲーテ、デューラー、モーツァルトなどが南下し、 逆方向にはベラスケスが描いた肖像画を追ってウィーンにお輿入れのマルガリータ王女、ヒトラーとの会談に向かうムッソリーニなどが通っている。

 岩山に続く山岳地帯は、第一次大戦時、アメリカからの義勇兵アーネスト・ヘミングウェイ青年がトラック運転手を務めた辺りで、ヘミングウェイはここで負傷し、 その経験から「武器よさらば」を書いたと言われる。

 葡萄畑ならぬ林檎畑が広がるのどかな風景である。ステルヴィオ峠は、このヴェノスタの谷を西に向かってのどん詰まりにある。


 ヴェノスタ谷からの登り道で車窓主に左側(東側)の景色、氷河があるピークの標高は3500m弱である。
 この登り道は、BBC放送の車番組『TOP GEAR』でも世界一魅力的なドライブウェイに選ばれた。






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