ボージュ 春

 北海道よりずっと北にあるアルザス(コルマールで北緯48度くらい)の冬は寒いというより暗い。雪がそんなに多いわけでも物凄く寒い訳ではないけれど、 朝は9時くらいでないと完全に明るくならないし夕方は4時で真っ暗になる(冬時間=標準時)。 これは関東と東海地方の明るく光り溢れる冬しか知らなかった身には応える。

 アルザスを含む中部/北ヨーロッパの春は何より明るくなる事から始まる。 2月も半ばになって日に日に明るくなっていくのを感ずるのは何よりも嬉しい。


カーニバル

 カーニバルはヨーロッパにおいてはドイツで盛んである。カーニバルにドイツを旅すると、 朝から町の中心がホテルと駐車場ごと閉鎖されたり、街道の村が 街道側道そっくり通行止めになって長時間足止めを食ったりすることがある。コルマールもドイツに近い風土であるせいかカーニバルをかなり盛大に祝う。
カーニバルは、まぶしい春の光に酔うイースターとは違って、長い冬篭りの終わりを祝うお祭りである。



蕗のとう

 ボージュのロレーヌ側、西斜面に蕗の大群落があった。夏に道路脇のかなりの面積が蕗の大きな葉っぱで覆われているのを発見、 これは春先には蕗のとうが出るな、と見当をつけ、翌春蕗のとう摘みに行った。年によっては凍りついた残雪の中から掘り出す感じであったが、 毎年摘んでてんぷらや佃煮で楽しんだ。
 実はヨーロッパで最初に蕗のとうを見つけたのはスイスのアローザとアンデルマット付近で、蕗のとうを摘みに毎年スイスまで来るのは大変だと思っていた矢先の ボージュ蕗の発見であった。蕗そのものも、やや細めであったがきゃらぶきにして食べた。私があの草を食べるといったら、いやにきっぱりと「あの草は食べちゃ駄目」と 言った現地の人もいたので地元では食べる習慣が無いようである。醤油が無い所為かもしれない。




 そのころになると、ボージュ山ろくに貼り付いた葡萄畑にも春が来る。

 この花はミラベルかクエッチであろう。
ともにいわゆるすももで、生食用というより、オー・ド・ビの原料である。無色透明のミラベルのオー・ド・ビは酒飲みに人気がある。


ランゲメー(Longemer)湖畔の水仙


 ボージュを越えるシュルクト峠(Col de la Schluct)のロレーヌ側の麓にある小さな湖であるランゲメー湖畔には野生の水仙が咲く。 この水仙は掘り取ったりは禁止だが、花だけ摘むのは自由で、地元の人はそれこそびっくりするような量を摘んでいた。 そういう人はコルマールなどで売るのだという話だった。アパートのお隣さんは引退した元判事という昔の西洋哲学者のような顔をした凄い貫禄の偉い人だったが、 その頃はもうあんまりお出かけにならなかったので、春にこの水仙のおすそ分けをすると奥様ともども 「おー春が来たか」 と喜んでくれた。 南仏生まれのこの奥様は異国から来た珍種の(自分より)若い男として常日頃私を往復3回の濃厚ビズーの標的にしていたのでこのような時は特に注意を要した。



ジェラルメー(Gerardmer)の水仙祭り

 ランゲメー湖の奥にあるジェラルメーの町では毎年水仙祭りが開かれる。呼び物は菊人形ならぬ水仙人形と水仙山車で、大量の水仙の花で作った人形が道端に 飾られ、山車が出た。ところがこのジェラルメーは観光地であるが普段から駐車難で知られる地で、水仙祭りではとんでもない所に停めて何キロも歩かなければならなかった。



蕨狩り

 ボージュの日当たりの良い東斜面で蕨を発見した。時期は故郷と同じ4月末。見た目は完全に蕨であるが、これが食えるか毒羊歯ではないのか(そんなものがあるのか) とかと、蕗よりもずっと慎重になった。知らない野草は茹でよ、少し食べて様子を見よ、苦かったり刺激味がしたら捨てよ、と米軍のサバイバルマニュアルにもあるが、 その通りにして少しづつ安全を確認した。安全確信してから落ち着いて食してみると日本の野生蕨より太く柔らかく灰汁も少なく美味しかった。私は薄味の卵とじが一番好きである。




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